- 単価の相場は役割と商流の深さで決まる。同じスキルでも、商流が1段深いだけで単価は変わる
- 「単価80万」がそのまま給料ではない。給料を決めるのは単価×還元率。この掛け算を知らないと会社を比べられない
- ただし率の高さで会社を選ぶのは危うい。見るべきは手取りの絶対値と、単価そのものが上がる構造か
まず相場観。役割別の単価の目安
業界の一般的な目安を先に出します。地域や案件によって幅がある前提で見てください。
| 役割 | 月額単価の目安 | |
|---|---|---|
| テスター・運用保守 | 40〜55万円 | |
| 開発(若手〜3年目安) | 50〜65万円 | |
| 開発(中堅・自走できる) | 65〜80万円 | |
| 上流・リーダー・高度専門 | 80〜100万円超 | |
| AI活用・AIエージェント開発 | 同役割より高値がつき始めている |
ただし、この表には大きな注意点があります。同じスキルの同じ人でも、商流が深いと単価は下がります。エンドが払う金額は同じでも、間に会社が挟まるほど現場に届く額が減るからです。この構造は「SESはやめとけ」の記事と単価の構造の記事に書きました。相場を見るときは「どの商流位置での単価か」をセットで見てください。
還元率とは何か。給料は「単価×還元率」で決まる
還元率とは、単価のうち何%が本人の給与・待遇として返ってくるかの比率です。業界ではおおむね50〜70%が多く、「高還元」を掲げる会社は70〜80%台をうたいます。
会社が取る残りの部分(マージン)は、中抜きの記事に書いた通り、営業・与信・労務・待機時の保障・事故対応という機能の対価です。率の扱いは会社の設計思想によって分かれます。率を看板にする会社もあれば、率や内訳ではなく給与の実額で示す会社もある。大事なのは率の数字ではなく、最終的にあなたの手取りが、市場の平均より高くなるかどうかです。
「単価80万」の手取りを計算してみる
検索の多い「単価80万円」で、ざっくり計算します(あくまで概算の例です)。
単価80万円 × 還元率60% = 月額給与ベース48万円。そこから社会保険料・税金が引かれて、手取りはおおむね37〜38万円前後です(月給の75〜80%が手取りの目安。扶養や賞与の設計で変わります)。
同じ単価80万でも、還元率が50%なら手取りは約31〜32万円、70%なら約43〜44万円。単価より還元率の差のほうが、目先の手取りには効くことが分かると思います。だからこそ次の話が重要になります。
「単価連動型」とは
あわせて調べられる「単価連動型」についても書いておきます。給与を固定額ではなく「単価×固定%」で決める制度のことです。単価が上がれば給与が自動で上がる透明な仕組みですが、確認すべき点が2つあります。単価が下がった・待機になったときの最低保障があるか。そして%の分母(単価そのままか、諸経費を引いた後か)。ここが曖昧だと、透明に見えて実際の計算が見えません。
手取りを増やす道は、2つある
ここまで読むと「なら還元率が一番高い会社を選べばいい」と思うかもしれません。私たちはSES事業者として、そこに正直な注意を書きます。手取りを増やす道は2つあります。分配率(還元率)を上げる道と、単価そのものを上げる道です。
分配率の道はゼロサムで、上限は100%です。そして極端に高い還元率は、営業・待機保障・育成・事故対応というマージンの機能の原資を削って成り立ちます。機能が薄くなれば、案件が切れたとき・トラブルが起きたときに会社が本人を守れなくなり、最悪の場合は会社ごと立ち行かなくなる。しわ寄せは、最後に本人へ返ってきます。

一方、単価そのものを上げる道には上限がありません。商流を浅くして分母を大きくする。AIを使って希少性を上げる。次の現場でも通用するスキルを蓄積する——単価の構造の記事に書いた3要素です。いま一番動きが速いのは希少性で、AIエージェントを使って開発できる人材には、通常より高い値がつき始めています。
実はこの話は、外から眺めた理屈ではありません。私たち自身、「還元率83%」を看板に掲げて運用してきた当事者です(当時のプレスリリースや求人は、今もネットに残っています)。率の看板で人が集まるのは事実です。でも率を上げるほど、営業・待機保障・育成というマージンの機能の原資は確実に薄くなり、「率を守るために機能を削る」という判断がいつか必ず来る。これは、やってみた側の実感です。だからこれからの私たちは、分配率の競争から降ります。率や内訳の話——会社と本人でパイを取り合うゼロサムの議論——ではなく、単価そのものを引き上げて、結果として本人の手取りが市場平均を上回る状態を作る。会社と本人が同じ方向を向いてパイを大きくする。それが私たちの答えです。

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